チョコレートケーキの歴史について

チョコレートケーキの知識

チョコレートケーキは300年以上前から世界で親しまれています。ここではチョコレートケーキの発展の下地となったチョコレートの普及から、現在も愛される由緒ある数々のチョコレートケーキの誕生について解説します。

 

1.チョコレートの普及について

チョコレートケーキについて語るには、そもそもチョコレートの普及を解説する必要があります。

 

チョコレートの原料であるカカオは、紀元前2000年ころから中央アメリカやメキシコで生産されていました。ただし現在のようなチョコレートの形にはなっておらず、カカオとトウモロコシをそれぞれ粉末にしてスパイスを加えて水で溶いたものが、薬用、滋養、嗜好品として使われていました。

 

これらは16世紀までヨーロッパに知られることはありませんでしたが、1500年代初頭、大航海時代に初めてスペインに持ちこまれます。その価値を高く見たスペイン王室は製造法を独占、1世紀にもわたって秘密の製法は守られていきます。

 

1600年代前半になって、スペインが隠していたチョコレートの製法はイタリア人に発見されます。それをきっかけにして、チョコレートはヨーロッパに一気に広まっていきます。

 

ここまではまだチョコレートは「飲み物」だったのですが、1600年代も後半になると固形の食べ物になり、技術の進歩もあってより多く食べられるように変化しました。こうしてチョコレートケーキが生まれる歴史上の下地が作られていったのです。

 

2.チョコレートケーキの登場 ― 1700年代初頭

1700年代になると産業革命もあって、チョコレート自体とチョコレート菓子の製造は大規模化していきます。そんな中でチョコレートケーキが初めて文献に登場するのが1719年。コンラッド・ハッガーが「チョコレートトルテ」を料理手帳に残しています。「トルテ」は切り分けて食べる焼き菓子を指しており、ほとんどは円形です。

 

1774年にはベルギーのムノンの著作で「チョコレートのビスキュイ」が紹介されています。これはチョコレートの粉末と小麦粉、メレンゲを混ぜて作られた焼き菓子だったようです。

 

3.ザッハトルテの誕生 - 1832年

1832年には現在でも作り続けられている、「ザッハトルテ」が生み出されます。製作者はフランツ・ザッハーという菓子職人で当時まだ16歳! 場所はオーストリアのウイーンです。この時のザッハーはある政治家に雇われた調理人でしたが、1848年には自分の店を持ちます。ここで提供したザッハトルテが大好評、「チョコレートケーキの王様」と呼ばれます。それ以外の料理の質も高かったことから、彼は富を築いていきます。

 

時が進んで、ザッハーの息子たちが活躍する時期、次男のエドゥアルドは父と協力してザッハトルテをさらに進化させ、人気を不動のものにします。

 

この時から人気のザッハトルテの製法は外部には漏らさないように管理されていました。1876年にはエドゥアルドが「ホテル・ザッハー」を開業し、このホテルは現在も営まれています。

 

しかし1934年、ザッハーの孫の世代にはホテル経営は行き詰まります。王室御用達菓子店・デメールが資金援助を申し出た際に、ホテル・ザッハーの経営陣は門外不出だったザッハトルテのレシピや販売権を譲渡します。

 

資金を得てホテル・ザッハーは持ち直しますが、この後ザッハトルテのレシピは本にまで掲載されてしまい、ホテル・ザッハーは不服として裁判を起こします。7年の裁判闘争を経て、ホテル・ザッハーはオリジナルザッハトルテを名乗るようになり、デメールはエドゥアルドのザッハトルテと名乗ることで決着、現在もこの形の販売は続いています。

 

ザッハトルテは小麦粉、卵、バター、砂糖からできた生地をオーブンで焼いた後、アンズジャムを挟むか塗るかして、表面をチョコレートでコーティングしたチョコレートケーキです。ちなみにオリジナルザッハトルテはアンズジャムを2層に挟み込んでいますが、エドゥアルドのザッハトルテはチョコの下の一層です。

 

4.ハンガリー国王にも愛されたドボシュ・トルテ - 1887年

「ドボシュ・トルテ」は1887年にハンガリーのヨーゼフ・ドボシュによって作られました。オーストリアの皇帝フランツヨーゼフ一世にも非常に気に入られたというそのチョコレートケーキは、6層のビスキュイ生地とチョコレートを重ねて、仕上げにキャラメリゼを使ったものです。

 

日本では知名度は若干低いですが、誕生から130年以上経った今も変わることなく世界で愛されています。

 

5.20世紀にパリで作られた「オペラ」 - 1995年

「オペラ」は1995年に、パリにあるダロワイヨという世界的に有名な菓子店で作られました。製作者シリアック・ガビヨンは、一見してケーキの層全体が見えること、一口食べればケーキの全体感がわかること、という新しいケーキを目指したのだそうです。

 

名称の「オペラ」はシリアックの妻であるアンドレ・ガビヨンによってつけられたもので、オペラ座のバレリーナに敬意を表したものと言われています。

 

オペラはコーヒーシロップを染み込ませた3層の生地に、コーヒーフレーバーのバタークリーム、チョコレートガナッシュを挟み、ビターなチョコレートで表面を覆っています。見た目の美しさ、味の良さ、どこをとっても世界に認められていることが感じられるチョコレートケーキです。

 

6.まとめ

300年を超えるチョコレートケーキの歴史をまとめました。ここでは歴史を語るために創始者や開発年が明確なものを中心に解説しましたが、現在では日本でもヨーロッパの直営店で製造販売されていたり、通信販売で購入したりすることもできますから、ぜひ味わってみてください。